勃起しにくい、途中で維持できないといった変化が続くなら、最初の相談先は泌尿器科が基本です。ただし、EDには体の病気、心の負担、服用中の薬など複数の背景があります。治療薬も「長く効く」「早く効く」だけでは選べません。この記事では、受診の目安、診察で聞かれること、主な治療薬の違い、安全面と費用の見方を順に説明します。
EDは「一度うまくいかなかったこと」だけでは決められない
EDは、満足な性行為に必要な勃起が得られない、または十分に維持できない状態を指します。とはいえ、一度うまくいかなかっただけで病名を決めるものではありません。疲れ、緊張、飲酒、その日の体調でも勃起は変わります。困る状態が繰り返す、しばらく続く、本人がつらいと感じるときが相談の入口です。[1]
「完全に勃起しない」だけが相談の対象ではありません。勃起まで時間がかかる、硬さが足りない、挿入後に維持しにくいなど、困り方には幅があります。性欲があるかどうかとも別の話です。自分を責めたり、パートナーへの気持ちが足りないと決めつけたりせず、いつから何に困っているかを整理してみてください。
医療機関を受診する目的は、薬をもらうことだけではありません。症状の裏に糖尿病や血管の病気などが隠れていないか、現在の体調で治療薬を安全に使えるかを調べる意味もあります。いきなり原因が一つに決まるとは限りませんが、診察を受けることで次に確かめることが見えやすくなります。
受診を考える変化と急いで相談したい症状
勃起の変化が何度も起こる、数週間から数か月続く、性生活に支障があるなら、都合のよい時期に泌尿器科へ相談できます。痛み、陰茎の曲がり、しこりなどを伴う場合も、EDだけと判断せず診てもらいましょう。糖尿病、高血圧、心臓病で通院中なら、かかりつけ医に先に話しても構いません。
一方、ED治療薬を使ったあとに勃起が4時間以上続いた場合は、様子を見ず直ちに医療機関を受診します。急に視力が落ちた、見えなくなったと感じた場合は服用を中止し、速やかに眼科を受診してください。[2] 胸の痛みや強い息苦しさがあれば通常の救急判断を優先し、ED治療薬を使ったことと薬の名前を救急隊や医療者へ伝えます。
EDの背景には身体・心理・薬剤など複数の要因がある
EDの原因は、大きく分ければ、血流や神経、ホルモンなど体に関するもの、緊張や不安など心に関するもの、薬の影響です。どれか一つではなく、いくつかが重なることもあります。年齢だけで決まるものでもありません。[1]
体の背景としては、糖尿病、高血圧、脂質異常、心血管系の病気、神経の病気、骨盤内の手術や外傷などが候補になります。喫煙や多量の飲酒、運動不足などが関わることもあります。これは「生活が悪いから起きた」という意味ではありません。原因を調べ、安全な治療を選ぶために医師が聞く情報です。
緊張が強い場面だけで難しい、朝には勃起がある、相手や状況によって違うといった情報も診察の手がかりになります。ただし、その違いだけで「心の問題」と断定はできません。体の要因と心理的な負担が同時にあることも珍しくないため、ありのままを伝えるほうが診療に役立ちます。
自分で薬を中止せず医師へ伝えること
降圧薬、精神科で処方される薬、ホルモンに関わる薬など、服用薬が勃起に影響する可能性もあります。しかし、自己判断で急に中止すると、もとの病気が悪化するおそれがあります。薬の名前、量、飲み始めた時期、症状が始まった時期を控え、処方した医師か受診先で相談してください。[1]
市販薬やサプリも含めて伝えます。「精力」「男性向け」と書かれた商品だけではなく、頭痛薬や睡眠を助ける薬など、普段使うものも対象です。お薬手帳があれば持参し、別の医療機関から出ている薬も一緒に見せると、危険な組み合わせを避けやすくなります。
最初の相談先は泌尿器科を基本に、状況で選ぶ
何科へ行くか迷ったら、泌尿器科が基本です。勃起の状態だけでなく、陰茎や精巣の診察、必要な検査、治療薬の選択までつなげやすいためです。EDを掲げる専門外来でも構いませんが、広告の目立ちやすさだけで決める必要はありません。
すでに糖尿病、高血圧、心臓病などで通院している人は、かかりつけ医にも相談してください。心臓や血圧の状態、現在の薬によっては、ED治療薬を使えない場合があります。かかりつけ医から泌尿器科へ紹介してもらう方法もあります。心の負担が大きいときは、泌尿器科で身体面を確認したうえで、必要に応じて心理面を扱う医療者につないでもらえます。
受診時に恥ずかしさを感じる人は少なくありません。受付では「男性機能について相談したい」「泌尿器科の相談です」とだけ伝えても受診できます。診察室では、医師が必要な質問を順に聞きます。うまく説明できる自信がなければ、症状をメモにして渡す方法もあります。
オンライン診療を選ぶ前に確認すること
オンライン診療は、通院時間を減らせる一方、どのサービスでも同じ安全性や費用とは限りません。診察する医師の氏名と医療機関が示されているか、本人確認があるか、現在の病気とすべての服用薬を聞かれるかを見ます。問診票への入力だけで薬が届くように見えるサービスは避けたほうが安全です。
検査が必要になったときの受診先、対面診療へ切り替える条件、服用後に異常が出たときの連絡方法も確認します。薬代だけでなく、診察料、送料、システム利用料、再診料を含む総額を見てください。処方される薬の一般名、用量、国内での承認状況が明記されているかも比較材料です。
診察と検査では何を確認するのか
最初の診察では、いつから、どのくらいの頻度で、勃起のどの段階に困るかを聞かれます。朝の勃起、自慰ではどうか、状況による差があるかも情報になります。答えにくい質問があっても、診断に必要な範囲を確かめるためのものです。話したくないことがあれば、その気持ちを医師に伝えて構いません。
病歴では、糖尿病、高血圧、心臓病、脂質異常、神経の病気、手術や外傷について確認します。喫煙、飲酒、睡眠、体重の変化、心理的な負担も手がかりです。処方薬、市販薬、サプリはできるだけ商品名まで伝えます。ED治療薬の電子添文でも、治療前に病歴や検査から原因となる病気を調べ、EDを客観的に診断するよう求めています。[3]
検査は全員が同じセットを受けるわけではありません。血圧測定や身体診察に加え、病歴に応じて血糖、脂質、ホルモンなどを調べます。心臓の状態を先に評価することもあります。「薬だけほしい」と思っていても、検査を勧められたら、何を確かめるためかを聞くと納得して選びやすくなります。
受診前に整理しておく情報

診察前には、次の内容を一枚のメモにしておくと話が早くなります。
- 症状が始まった時期と、毎回か時々か
- 勃起しにくい、硬さが足りない、途中で弱くなるなど具体的な困り方
- 朝の勃起や自慰、状況による違い
- 治療中の病気、過去の手術や入院
- 処方薬、市販薬、サプリの名前と量
- 胸痛、息切れ、運動時の症状の有無
- 過去にED治療薬を使った場合は、薬名、量、効き方、副作用
パートナーと一緒に受診する必要はありません。本人だけで相談できます。必要だと感じたときに、どこまで共有するかを医師と話せば十分です。
ED治療薬は効き方だけでなく禁忌・相互作用で選ぶ
国内の医療機関で使われる主な成分には、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルがあります。いずれも性的な刺激に伴う勃起を助ける薬で、飲むだけで自動的に勃起させる薬でも、性欲を高める薬でもありません。合う薬は、持病、併用薬、食事との関係、希望する時間の幅、副作用を含めて決めます。
| 主成分 | 服用の目安 | 選ぶときに知っておきたい点 |
|---|---|---|
| シルデナフィル | 通常は性行為の約1時間前。次の服用まで24時間以上あける | 食事と同時に飲むと効き始めが遅れることがある。用量は医師が体調に合わせて決める。[2] |
| バルデナフィル | 通常は性行為の約1時間前。次の服用まで24時間以上あける | 年齢や肝機能などで開始量・上限が変わる。心電図の異常や一部の薬との組み合わせにも固有の制限がある。[3] |
| タダラフィル | 性行為に先立って服用し、用量と間隔は処方に従う | 医療用のほか、10mg製剤が薬剤師の確認を要する「要指導医薬品」に指定された。医療用と市販用の対象や購入条件を混同しない。[7] |
この表は優劣の順位ではありません。「長く作用する薬なら自分に一番よい」「早く効く薬なら安全」とは言えないからです。処方された量を増やしたり、複数のED治療薬を同じ日に重ねたりせず、効きにくかった状況と飲み方を医師に伝えて調整します。
よくみられる副作用には、頭痛、顔のほてり、鼻づまり、消化不良、めまいなどがあります。視界の色合いが変わるなど、見え方に影響することもあります。どの症状が出るか、どの程度かは人によって異なります。強い症状が出たときや、いつもの体調と明らかに違うときは、追加で飲まず処方元へ連絡してください。[2]
硝酸薬など併用できない薬を必ず確認する

狭心症などに使う硝酸薬や、同じように血管へ作用する一部の薬とED治療薬は併用できません。ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジルなどとの組み合わせでは、血圧が危険なほど下がるおそれがあります。[4] 胸の薬を毎日飲んでいなくても、発作時だけ使う舌下錠や貼り薬、スプレーを持っているなら必ず伝えます。
薬ごとに、重い肝臓病や腎臓病、血圧、最近の心血管系の病気、網膜の病気、一部の抗菌薬や抗真菌薬など、追加の注意や禁忌があります。薬の名前を覚えて判断するのは難しいため、お薬手帳と現物を医師・薬剤師に見せるのが確実です。家族の薬や知人の薬を分けてもらうことは避けてください。
服用後に胸痛が出たときは、自己判断でニトログリセリンなどを使う前に救急へ連絡し、ED治療薬の使用時刻と薬名を伝えます。言いにくくても、治療の安全に直結する情報です。財布やスマートフォンに薬名を記録しておくと、会話が難しい場面でも伝えやすくなります。
個人輸入・出所不明の薬を避ける
インターネットで見つけた安い薬が、本物かどうかを外観だけで見分けることはできません。厚生労働省の注意喚起では、表示と異なる成分が入った偽造品や、使用後の健康被害が報告されています。[6] 国内製品と同じ名前や似た箱でも、安全性は保証されません。
個人輸入品は、成分量、混入物、保管状態を購入者が確かめにくく、副作用が起きたときに購入先の説明を追えないこともあります。価格を比べるなら、国内の医療機関や正規の販売経路に絞り、診察や安全確認を含む総費用で見てください。
薬以外の治療と生活上の対応
ED治療は飲み薬だけではありません。糖尿病や高血圧などがあれば、その治療を続けることが土台になります。喫煙、飲酒、睡眠、運動について変えられる点を医師と相談することもあります。ただし、生活を整えるだけで治るとは限らず、本人を責める材料にもなりません。[1]
緊張や失敗への不安、パートナーとの関係が影響しているときは、心理面への支援やカウンセリングが選択肢になります。体の原因を調べずに「気持ちの問題」と片づけるのではなく、身体面の評価と並行して考えます。パートナーと話す場合は、原因探しや責任追及ではなく、「治療を急がず一緒に相談したい」と伝えるほうが話を始めやすいでしょう。
飲み薬が使えない、十分な効果が得られない場合には、陰圧式勃起補助具、局所的な治療、手術などが検討されることがあります。適する方法は原因と希望で変わるため、泌尿器科で説明を受けます。自由診療で見かける注射や再生医療を、一般的な治療と同じ確かさがあるものとして選ばないでください。承認状況、分かっている効果と不確かさ、副作用、総費用を別々に尋ねる必要があります。
費用と診療条件を比較するときの注意点
一般的なED治療は自費診療が中心ですが、すべてが必ず自費とは限りません。EDによる男性不妊で、一般不妊治療のタイミング法に用いるなど、国が定めた条件をすべて満たす場合に限り、シルデナフィルやタダラフィルの一部が保険診療の対象になります。[5] 単にEDと診断されたことや、妊娠を希望していることだけで自動的に保険適用になるわけではありません。
自費の料金を見るときは、1錠の価格だけを比べないでください。2026年8月28日に公式ページを確認した3医療機関では、シルデナフィル50mgは1錠800〜880円、タダラフィル20mgは1錠980〜1,500円でした。しかし、初診料や処方手数料が別にかかるため、最も安い1錠価格の施設が支払総額でも安いとは限りません。
たとえば、坂泌尿器科病院はシルデナフィル50mgが825円、タダラフィル20mgが1,265円で、初回手数料3,300円が別途かかります。高山病院はそれぞれ880円と980円で、初診料5,200円が別です。ひこさか医院はそれぞれ800円と1,500円で、初回受診料2,880円のほか時間帯加算があります。いずれも税込の掲載額です。検査、追加の薬、再診、送料などが加わる可能性があるため、受診前に自分の条件での総額を尋ねてください。
料金は確認後に変わる可能性があります。処方できないと判断された場合の診察料や手数料、キャンセル・返金条件も施設で異なります。薬の安さだけでなく、安全確認に必要な診察や検査が受けられるかを含めて選ぶことが大切です。
受診・契約前のチェックリスト
受診先やオンライン診療を決める前に、次の項目を見ておくと、料金と安全面を同じ土俵で比べられます。
- 診察する医師と医療機関の名称が分かる
- 持病、胸の症状、服用薬、サプリを確認する診察がある
- 処方薬の一般名、用量、国内での承認状況が示される
- 必要な検査と、対面受診へ切り替える条件を説明してもらえる
- 薬代だけでなく、初診・再診、検査、手数料、送料を含む総額が分かる
- 処方できなかった場合やキャンセル時の料金が分かる
- 副作用や緊急症状が出たときの連絡先がある
- 個人輸入品や出所を確かめられない薬を扱っていない
その場で契約を急かされたり、診察前から特定の薬を大量購入するよう勧められたりした場合は、いったん持ち帰って構いません。「必ず効く」「検査は一切いらない」といった説明も、医療の個人差や安全確認を無視しています。納得できるまで質問し、別の医療機関で意見を聞くことも選択肢です。
EDについてよくある質問
若くてもEDになることはありますか
あります。年齢が若くても、緊張、睡眠不足、体調、薬の影響、病気などが関わる可能性があります。若いから体の検査は不要、年齢が高いから原因は老化だけ、と決めることはできません。困る状態が続くなら年齢にかかわらず相談できます。[1]
自然に治るまで待ってもよいですか
一時的な疲れや緊張で変化することはあります。ただし、何度も続く、本人がつらい、持病や服用薬がある場合は、待ち続けるより相談したほうが原因と安全な選択肢を整理できます。胸痛、4時間以上続く勃起、急な視力低下などは自然に戻るのを待つ症状ではありません。
パートナーにはどう伝えればよいですか
愛情の不足や相手の魅力の問題ではないことを先に伝えると、責め合いになりにくくなります。「最近うまく維持できないことがあるので、体調も含めて一度相談したい」と、分かっている事実と次の行動だけを話す方法があります。誰にどこまで伝えるかは本人が決めて構いません。
市販のサプリで治療薬の代わりになりますか
サプリを承認されたED治療薬の代わりとして扱うことはできません。成分や根拠が異なり、持病や薬との組み合わせに注意が必要な商品もあります。「天然だから安全」「精力がつけばEDも治る」とは言えません。使っている商品があれば、容器や成分表を診察時に見せてください。
市販のシアリスなら診察なしで買えますか
タダラフィル10mgの市販用シアリスは、自由に棚から取って買う一般用医薬品ではなく、薬剤師の確認が必要な要指導医薬品に指定されています。[7] 医療用とは対象や用量、購入条件が異なります。持病や併用薬によって使えない場合があるため、薬剤師の質問には処方薬や発作時だけ使う薬も含めて伝えてください。
症状が続く、基礎疾患や服用薬がある、治療薬を安全に使えるか分からない場合は、泌尿器科かかかりつけ医へ相談してください。薬を先に選ぶのではなく、原因の手がかりと禁忌を確認してから選ぶことが、遠回りに見えても安全な進め方です。
料金情報の確認元
料金と診療条件は、いずれも2026年8月28日に各医療機関の公式ページで確認しました。掲載額は変更される可能性があり、診察、検査、薬、手数料、送料などすべてを含むとは限りません。受診前に最新の総額と条件を公式ページまたは医療機関へ確かめてください。
- 坂泌尿器科病院「ED(勃起不全)」:薬代、初回・2回目以降の手数料、処方不可時の扱い
- 高山病院「ED外来」:薬代、初診料・再診料、検査に関する案内
- ひこさか医院「料金表」:薬代、初回・再受診料、時間帯加算、処方上限
参考文献
- 日本性機能学会・日本泌尿器科学会『ED診療ガイドライン第3版』2018年
- ヴィアトリス製薬合同会社『バイアグラ錠25mg/50mg・ODフィルム25mg/50mg 電子添文』2024年
- 沢井製薬株式会社『バルデナフィル錠10mg/20mg「サワイ」電子添文』2026年
- 日本新薬株式会社『シアリス錠5mg/10mg/20mg 電子添文』2026年
- 厚生労働省保険局医療課長『不妊治療で使用される医薬品の保険給付上の取扱いについて』2022年
- 厚生労働省『シアリス錠の偽造医薬品による健康被害に対する注意喚起』2011年
- 厚生労働省医薬局医薬品審査管理課『要指導医薬品として指定された医薬品について(令和8年5月20日)』2026年

