「いろいろ試したのに、なんでニキビが治らないんだろう…」
鏡を見るたびに、また新しくできた赤いニキビにため息が出る。
洗顔も保湿も気を使っているつもりなのに、一向に良くならない。人と会う時、清潔感がないと思われていないか不安になる…。
今回は、そんななかなか治らない大人ニキビにお悩みの男性に、大人ニキビの原因やセルフケア、保険診療での治療から美容クリニックでのニキビ治療について分かりやすく解説します。
男の大人ニキビが治りにくい原因
「女性よりもスキンケアはシンプルなのに、どうして男のニキビはしつこいのか?」そう感じたことはありませんか。それには、男性特有の理由があります。
一つひとつ原因を見ていきましょう。

原因1:過剰な皮脂分泌と男性ホルモンの影響
男性ホルモンの一種であるテストステロンは、皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を活発にする働きがあります。思春期だけでなく、分泌量がピークとなる20代、30代になってもその影響は続きます。この過剰な皮脂が毛穴に詰まってしまうと、皮脂詰まりを起こした毛穴の内部でアクネ菌や雑菌が増殖し、炎症を起こすことがニキビの直接的な原因となるのです。
原因2:間違ったスキンケアによるバリア機能の低下
ベタつくからといって、洗浄力の強すぎる洗顔料でゴシゴシ洗っていませんか? 実は、皮脂を落としすぎると、肌は「乾燥している」と勘違いし、余計に皮脂を分泌しようとします。さらに、肌の表面を守る「バリア機能」が低下し、外部からの刺激を受けやすく、ニキビができやすい悪循環に陥ってしまうのです。
原因3:毎日の髭剃りが肌に与えるダメージ
毎日の髭剃りは、カミソリの刃が肌表面の角質を削り取り、目に見えない無数の傷をつけています。この傷から雑菌が入り込んだり、肌のバリア機能が低下したりすることで、口周りやあごのラインにニキビができやすくなります。
原因4:多忙な社会人生活が引き起こす生活習慣の乱れ
仕事のストレス、不規則な食事、睡眠不足…。これらはすべて、ホルモンバランスの乱れや、肌のターンオーバー(生まれ変わり)のサイクルを狂わせる原因となります。肌の健康を保つために必要な栄養が不足し、古い角質が排出されずに毛穴を塞いでしまうことも、治りにくい大人ニキビの一因です。
ニキビを悪化させないセルフケア
美容医療を考える前に、まずは日々のケアが肌の土台を壊してしまっていないか、見直してみましょう。「もうやってるよ」と思うことでも、少しやり方を変えるだけで肌は変わる可能性があります。
ゴシゴシ洗いはNG!「保湿」こそが大人ニキビケアの鍵
ニキビケアの基本は「優しく洗い、しっかり潤す」こと。肌のベタつきが気になる方ほど、化粧水や乳液を避ける傾向にありますが、それは逆効果。
洗顔後の肌は水分が蒸発しやすい状態なので、すぐに保湿することが大切です。化粧水で水分を補い、乳液やゲルといった油分の少ない保湿剤でフタをすることで、水分の蒸発と皮脂の過剰分泌を防ぎます。
コンビニ飯や夜更かしは要注意!肌を内側から変える食事と睡眠
肌は、食べたものと睡眠の質を正直に映し出す鏡です。脂質の多い食事や糖分の摂りすぎは、皮脂の分泌を増やす原因になることが知られています [1]。ビタミンB群やビタミンC、食物繊維などを意識的に摂り、バランスの良い食事を心がけましょう。また、肌の細胞が再生されるのは睡眠中です。質の良い睡眠を確保することが、健やかな肌への近道です。

市販薬は使うべき?効果的な成分と選び方
セルフケアの一環として、市販のニキビ治療薬を試すのも一つの方法です。炎症を抑える「イブプロフェンピコノール」や、アクネ菌を殺菌する「イソプロピルメチルフェノール」といった成分が含まれているものが効果的です。
ただし、これらはあくまで対症療法であり、2週間ほど使用しても改善が見られない場合は、次のステップに進むことを考えましょう。
皮膚科での男の大人ニキビ治療(保険診療)
セルフケアを徹底してもニキビが改善しない、あるいは赤く腫れた痛いニキビが次々にできる…。そんな時は、一人で抱え込まずに皮膚科の専門医に相談しましょう。
皮膚科に行くべきニキビの見極め方
- 赤く腫れて、触ると痛いニキビが複数ある
- 同じ場所に繰り返しニキビができる
- ニキビが膿(うみ)を持っている(黄ニキビ)
- セルフケアを2週間続けても改善の兆しがない
上記のような状態であれば、なるべく早く皮膚科を受診することをおすすめします。ニキビ跡を残さないためにも、早期の治療が重要です。
保険診療で受けられる主な治療法(塗り薬・飲み薬)
皮膚科では、ニキビの状態に合わせて、主に以下のような薬が処方されます。これらは日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されている標準的な治療法です [2]。
- 塗り薬: 毛穴の詰まりを改善する「アダパレン」や「過酸化ベンゾイル」、細菌の増殖を抑える「抗菌薬」など。
- 飲み薬: 炎症が強い場合には、「抗菌薬」の内服が処方されることがあります。
知っておきたい保険診療のメリットと限界点
保険診療の最大のメリットは、健康保険が適用されるため、費用を抑えて標準的な治療を受けられる点です。今あるニキビの炎症を抑えるためには、非常に有効な手段です。
一方で、保険診療は「病気の治療」が目的のため、できてしまったニキビ跡の改善や、ニキビができにくい肌質へと根本的に変えていく「美容」目的の治療は対象外となります。薬をやめるとニキビが再発してしまう、という経験がある方も少なくないかもしれません。
美容皮膚科での男の大人ニキビ治療(自費診療)
「一時的にニキビは治ったけど、すぐに再発してしまう..」「ニキビ跡の赤みやシミ、クレーター状の肌の凹凸が治らない..」といった方には、美容皮膚科での大人ニキビ治療、ニキビ跡治療という選択肢もあります。
皮膚科と美容皮膚科の治療の違い
美容皮膚科の治療は、保険診療のような対症療法だけではありません。ニキビの原因となる皮脂腺に直接アプローチして「ニキビの再発を根本から断つ」ことを目標とした治療や、できてしまった「ニキビ跡を綺麗な肌に導く」治療、そして「ニキビができにくい肌質へ改善する」といった、より根本的なアプローチが可能です。まさに、本気で肌を変えたい方のための治療と言えます。
「ニキビを治す」だけでなく、「ニキビを綺麗に治す」ことが美容皮膚科の治療の目的なのです。
【ニキビの状態別】男性におすすめの最新ニキビ治療
ここでは、代表的な治療法をいくつか紹介します。
しつこい炎症ニキビの根本治療(ポテンツァ、アグネスなど)
ポテンツァやアグネスは、特殊な針(マイクロニードル)と高周波(RF)の熱エネルギーを利用する治療法です。ニキビの原因である皮脂腺に直接熱を加えて破壊することで、同じ場所からのニキビの再発を長期的に防ぐことができます。
難治性ニキビ治療の最終手段(イソトレチノイン内服療法)
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体を含む内服薬で、皮脂腺を強力に縮小させ、皮脂の分泌を劇的に抑制する効果があります。他の治療法で効果が見られなかった重症のニキビや、繰り返す難治性のニキビに対して非常に高い効果が期待できる一方、副作用のリスクもあるため、医師の厳格な管理のもとで服用する必要があります [3]。
イソトレチノインの服用は、副作用のリスクを伴います。
また、定期的な血液検査を受けることも推奨されているため、安易に個人輸入のイソトレチノインを使用することは絶対にやめましょう。
できてしまったニキビ跡の改善(ダーマペン4、フラクショナルレーザーなど)
クレーターのように凹んでしまったニキビ跡には、肌が本来持つ創傷治癒能力を利用した治療が有効です。ダーマペン4は極細の針で肌に微細な穴を開け、肌の再生を促します。フラクショナルレーザーは、レーザーで皮膚に点状の穴を開けることで、新しい皮膚の再生を促し、滑らかな肌へと導きます。
ニキビ予防と肌質改善(ケミカルピーリングなど)
ケミカルピーリングは、肌に薬剤を塗布して古い角質を取り除き、肌のターンオーバーを正常化させる治療です。毛穴の詰まりを防ぎ、ニキビができにくい肌質へと整えていきます。
美容皮膚科の主なニキビ、ニキビ跡治療を徹底比較
「いろいろな治療法があるのは分かったけど、自分にはどれがいいの?」という方のために、主な治療法の特徴を一覧にまとめました。
治療法 | 期待できる効果 | 適した症状 | ダウンタイム | 費用の目安(1回) |
ポテンツァ | ニキビの根本治療、再発予防、ニキビ跡改善 | 炎症ニキビ、クレーター | 2日~1週間程度 | 40,000円~100,000円 |
アグネス | ニキビの根本治療、再発予防 | 炎症ニキビ | 数日~1週間程度 | 20,000円~50,000円 |
イソトレチノイン | 皮脂分泌の強力な抑制、ニキビの劇的な改善 | 重症の炎症ニキビ 繰り返すしつこいニキビ | なし(※副作用に注意) | 20,000円~30,000円/月 |
ダーマペン4 | ニキビ跡の凹凸改善、肌質改善 | クレーター、毛穴の開き | 3日~1週間程度 | 20,000円~40,000円 |
ケミカルピーリング | 肌のターンオーバー促進、ニキビ予防 | 白ニキビ、軽度のニキビ跡 | ほぼなし~数日 | 10,000円~20,000円 |
※費用はあくまで目安であり、クリニックや治療範囲によって異なります。
美容クリニックの選び方 3つのポイント
自由診療は高額になることもあるため、クリニック選びは慎重に行うことが大切です。長年自由診療業界に携わった経験から、4つのポイントを紹介します。
ポイント1:男性のニキビ治療実績が豊富か
クリニックのウェブサイトやSNSで、男性の症例写真や治療実績を確認しましょう。男性の肌質やニキビの原因を深く理解しているクリニックや医師を選ぶことが重要です。
ポイント2:カウンセリングでリスクやデメリットも説明してくれるか
メリットだけでなく、治療に伴う痛み、ダウンタイム、副作用などのリスクについても、きちんと時間をかけて説明してくれる医師がいるクリニックは信頼できます。

ポイント3:料金体系が明確で、無理な勧誘がないか
提示された金額に何が含まれているのか(麻酔代、薬代など)、追加料金が発生する可能性はないかなどを事前に確認しましょう。また、即決を迫ったり、高額なコース契約を強く勧めてきたりするクリニックは絶対に避けましょう。
ポイント4:複数のクリニックでカウンセリングを受けよう
一番大切なことは、複数のクリニックでカウンセリングを受けることです。クリニックによって治療法や使用する薬剤、機械も異なりますので、じっくりと話を聞き・比較したうえでニキビ治療を受けるクリニックを選ぶことが大切なのです。
「一度持ち帰って考えます」と言っているのに、「今日契約したら〇〇円割り引きます」など、すぐに帰らせてくれないクリニックは要注意!です!
「今日は話を聞いて見積りだけ貰いに来ましたので、見積りをください」と言ってすぐに帰った方が無難でしょう。
まとめ
「何をしても治らない…」と諦めかけていた男性の大人ニキビ。しかし、これまで見てきたように、解決のための道筋は決して一つではありません。
まずは、セルフケアを見直し、肌の土台を整えること。それでも改善しなければ、皮膚科の保険診療で原因菌を殺菌し、炎症を抑えること。 そして、ニキビを治すだけじゃなく、ニキビが出来にくい肌を目指すなら、美容皮膚科という選択肢もあります。
この記事が、長年ニキビに悩み続けてきた皆さんの背中を押し、自信あふれる毎日を取り戻すための一歩となれば、これほど嬉しいことはありません。
よくあるご質問
Q. 治療の痛みやダウンタイムが心配です。仕事に影響は出ますか?
A. 痛みやダウンタイムの程度は、治療法によって異なります。
ケミカルピーリングのように、施術後に軽い赤みが出る程度でダウンタイムがほとんどない治療もあれば、ポテンツァやフラクショナルレーザーのように、施術後数日〜1週間ほど赤みや腫れ、かさぶたが続く治療もあります。
痛みが心配な治療では、麻酔クリームや笑気麻酔といった麻酔を使用することで大幅に緩和できます。カウンセリングの際に、ご自身の仕事の状況を伝え、最適な治療タイミングを相談することをおすすめします。
Q. どのくらいの期間で効果を実感できますか?
A. 効果を実感できるまでの期間も、治療法や個人の肌質、ニキビの重症度によって変わってきます。
例えば、イソトレチノインの内服治療は、数ヶ月単位でじっくりと効果を見ていく治療です。一方、ポテンツァやダーマペンのような肌の再生を促す治療は、1回でも肌のハリなどの変化を感じる方もいますが、ニキビやニキビ跡の改善をはっきりと実感するためには、一般的に1ヶ月〜1ヶ月半の間隔を空けて、3〜5回程度は継続して治療を受けることがおすすめです。
特にニキビ跡の治療には時間がかかるため、焦らずに医師と立てた治療計画に沿って、継続していくことが重要になります。
参考文献
[1] Kucharska, A., Szmurło, A., & Sińska, B. (2016). Significance of diet in treated and untreated acne vulgaris. Postepy dermatologii i alergologii, 33(2), 81–86.
[2] 日本皮膚科学会ガイドライン. (2023). 尋常性痤瘡治療ガイドライン 2023.
[3] Layton, A. (2009). The use of isotretinoin in acne. Dermato-endocrinology, 1(3), 162–169.